2023年12月号(懐かしく思う曲)

《懐かしく思う曲》
多くの日本人が懐かしい歌と思うものに、童謡や唱歌があります。その中でも「ふるさと」という歌は有名です。この歌の作詞者の高野辰之が長野県出身ということもあり、長野県では特に「ふるさと」は愛されているようです。あまり知られてはいませんが、この歌の作曲者は岡野貞一という人物です。岡野は本郷中央教会のオルガニストを長年務めた人物でした。


昔ながらの民謡のリズムやメロディーとは明らかに違う曲が明治以後の日本で歌われるようになったわけですが、その背後にはキリスト教の讃美歌の影響があったという意見は、何人かの学者によって述べられています。
元奈良教育大学教授の安田寛氏は次のように述べています。「肝心な点は、三拍子というリズムは、西欧の音楽が入ってくるまでは、日本にはほとんどなかったリズムだということである。二拍子とか四拍子の場合だと、それと似たリズムが昔から日本にあった。しかし、三拍子に似た日本のリズムを探しても、ほとんど見つからない。だから、明治から後の日本の三拍子の歌、「ふるさと」、「赤トンボ」とかをじっと眺めていると、日本の歌が西欧から影響を受けてどう変わってしまったのか、はっきり見えてくる。・・やがて私は、日本人がそれまで知らなかった三拍子を受け入れたことには、讃美歌が関係していたのではないか、と考えるようになっていくのである。」(※1)


 キリスト教は外国の宗教ということで、自分とは関係がないと思っている人も多いかもしれませんが、間接的に私たち日本人の習慣などと関係しているものは多くあります。キリスト教の讃美歌から影響を受けたと思われる童謡や唱歌のリズムもそのひとつです。
ぜひ、11月26日(日)午後2時からの「茶話会」(さわかい)においでいただき、ごいっしょに懐かしい歌を歌いましょう。


 12月になればクリスマスが近づいてきます。しばらくまえは、「諸人(もろびと)こぞりて」とか「きよしこの夜」を教会に来ている人以外でも歌うことができたように思いますが、最近では状況がずいぶん変わって歌えない人が増えた印象があります。逆から言えば、明治から昭和にかけてキリスト教の影響を日本の人々はごく自然に受け入れていたとも言えます。この国でキリスト教が明治以後影響を及ぼしたことの一つに日曜学校(教会学校)があります。昔は子どもたちを受け入れて歌ったりする環境があまりなかったこともありますが、多くの子どもたちが日曜日の朝、教会に集ったものでした。そして親御さんも抵抗なく子どもが教会に行くことを許したものでした。しかし、平成になるぐらいからカルト宗教が出てきたことが原因で、キリスト教も警戒感をもって見られるようになった感じがします。


 直接的に、あるいは間接的に多くの分野で私たちの国はキリスト教と関係してきたことは事実です。ある意味では、あなたとキリスト教は少しは関係があるとも言えます。
ぜひ、お気軽に茶話会やクリスマスなどに教会においでくださることを願っています。
〔大泉聖書教会牧師池田尚広〕
(※1)安田寛著「日韓唱歌の源流」P.53-54音楽之友社