2025年2月号(感動を誘う歌)

《感動を誘う歌》
隠れた才能を発掘するイギリスの番組に、「ブリテンズ・ゴット・タレント」(Britain’s God Talent)という番組があります。この番組に日本のお笑い芸人なども参加して会場の笑いを誘ったことがありました。また、ここで発掘されたスーザン・ボイルというイギリス人女性がNHKの紅白歌合戦に招かれて、すばらしい歌声を披露してくれたこともありました。わりと最近の企画では少年少女が美しい歌声を披露するプログラムがあり、あるアフリカ系の少年がすばらしいボーイソプラノで讃美歌を歌っていました。その歌を聞いた多くの会衆は感動で涙を流していたのが印象的でした。その歌の題は「グッドネス・オブ・ゴッド」(Goodness of God)という歌ですが、題を直訳すれば「神の良さ」ということとなります。


 その歌の内容は、「神は良いお方(かた)なのだ」ということを歌っているわけですが、そのことについて考えさせられました。それは、「神も仏もない」と誰かが叫んでも、他の人の感動を誘うことはありませんが、「神は良いお方(かた)だ」と歌うことは他の人の感動を誘うことがあるということです。私たちが生きていけば辛いことや悲しいことを経験することがあります。また、不条理と思われることを経験することもあります。そのようなことがある世界の中で、それでも「神は良いお方(かた)なのだ」と歌いあげることが、人の心に響くのではないでしょうか。


 喜劇俳優のチャールス・チャップリンのことは多くの人がご存じだと思います。映画評論家の淀川長治さんは自身の著書の中で、チャップリンとその母親について次のように書いています。「チャップリンは幼少時代にひどい苦労をなめた。貧しさのあまり頭が変になった母とチャップリンは二人暮らしになった。父を五歳で失ったときに母は発狂した。腹ちがいの九歳の兄はこの家から逃れて船のボーイになった。五歳のチャップリンは食べるものがなくなって、マーケット裏に捨てられた残パンを拾って食べたこともあったという。その苦労がのちのチャップリン喜劇の中でいかに生きて描かれているかがわかるのである。それにこの母が実に偉かったのである。気が静まって正気を戻すと、小さな我が子を枕辺に呼び「イエス様はおまえが運命をまっとうすることをお望みなのだよ」と何度もさとした。つまり自殺をするなということである。それは小さな我が子に言うよりも苦しい自分に言って聞かせたのであろう。そのチャップリンの苦労がのちの幸せ(芸術)の花を咲かせたのである。思えば神様は人間を豊かに幸せにするために苦労させるのだ。」(※1)
小説のなかには、悲惨な経験が続く状況で神を信じ続ける精神的な葛藤を描いているものもあります。しかし小説はフィクションで、チャップリンの経験は事実です。また、チャップリンほどの試練を経験する人はそれほど多くはありません。


「神は良いお方(かた)だ」と信じることは、自分の今までの経験を肯定することでもあります。人は自分の性別や個性などを選ぶことはできませんが、そのようなことに神の意志を認めることは自分自身を受け入れることにつながります。ぜひ教会にお気軽においでくださり、「良き神」について知っていただきたいと願っています。
〔大泉聖書教会牧師 池田尚広〕
(※1)淀川長治著「愉快な心になる本」KKベストセラーズP.155
「Goodness of God 」Youtube をご覧ください。