《アメイジンググレイス》

アメイジング・グレイスという歌は、多くの方がご存知だと思います。あるジュエリーショップがテレビコマーシャルで使ってから、日本でもその旋律は多くの人に親しまれるようになりました。この歌は、テレビなどでは日本語で歌われることはほとんどなく、たいてい英語で歌われます。その理由は歌われている内容がキリスト教で語っているいわゆる宗教的なことであるからだと思います。

 この歌はまた、ひじょうに興味深い歴史を持っています。作詞をした人物は、18世紀から19世紀にかけて生きたジョン・ニュートンという奴隷船の船長をしていたイギリス人でした。また、曲は誰が作ったかわからないメロディーですが、曲のルーツはアフリカにあるという説があります。そうだとすると、奴隷であった黒人の曲に、かつて奴隷船の船長であった白人の歌詞がつけられているわけです。そして、歌詞の内容は、罪深い者が神の赦しを経験したことが歌われています。

Amazing grace ! How sweet the sound that saved a wretch like me. I once was lost but now am found, was blind but now I see.

驚くべき恵み。なんというすばらしい調べか。私のような罪深い者が救われるとは。私はかつて迷った者であったが、今は(神から)見出されている。かつては見えていないような者だったが、今は見ることができる。

ジョン・ニュートンは、やがて牧師となり、神の恵みを語る者となりました。
 人は正しく歩むべきであり、悪しき行為が正当化されてはいけないことは確かです。しかし誰にでも、失敗したりまちがいを犯すことがあります。そんな時、ありのままで受け入れられる経験が与えられなければ、立ち直ることは難しいのではないでしょうか。
 人の成長のみならず、更生など、あらゆる面で親の役割は重要です。どんなにダメでも失敗しても、存在そのものを受け入れてくれる親がいるので、人は立ち直ることができます。しかし、親はいつまでもそばにいるわけではありません。

ジョン・ニュートンは幼い時からイエス・キリストの救いについての話は聞いていました。しかし、真剣に耳を傾けるようになったのは、かなり時間が経ってからのことだったようです。今までの自分の生き方を振り返り、こんな者でも、果たして神から受け入れてもらえるだろうかと自分に向き合った時があったのでしょう。親が子どもを無条件に受け入れてくれるように、神はありのままの自分を受け入れてくださるというメッセージが彼の心に響いてきたのではないでしょうか。

「ありのままで受け入れられる」というメッセージは、最近では多く聞くことかもしれません。しかし、単なる机上の空論ではなく、実体が伴っていなければなりません。ジョン・ニュートンは実体を体験したと言えます。

 神が私たちをありのままで受け入れる手段は、キリストの犠牲を通してです。キリストは私たちの罪を一身に背負い、十字架にかかってくださいました。私たちの身代わりとなってくださったのです。そのことを感謝して受け入れるなら、神が自分を怒り続けているという感情や、たまに思い出される「あんなことをしなければよかった」というような感情から解放されるのです。

あなたは、神に覚えられています。作家の三浦綾子さんは、次のように語っています。「神様は、不要な人間をお創りになるほど愚かな方ではない。一人ひとり、かけがいのない存在として、この世にたったひとりの尊い存在として誕生させてくださったのだ。」

神は、人がジョン・ニュートンのように、キリストを通して神のもとに帰ってくることを願っています。わからないことも多くあるかもしれませんが、ぜひ教会においでくださり、あなたを愛しておられる神について知っていただきたいと願っています。

(大泉聖書教会 牧師:池田尚広)