《ゴスペルの話》
 歌手の和田アキ子さんは、他の人から「どうして歌うようになったのですか?」と聞かれることが何度もあったそうです。それで、その質問に正確に答えるために自分の歌のルーツであるゴスペルを聴きたいと思ってアメリカを訪れました。そして、アマチュアのコーラス・グループがゴスペルを歌っているところに行き、「オー・ハッピー・デー」という歌を聴きました。あまりにも感動して涙を流したそうです。コーラスが終わって、そのグループに属していた一人の50代の女性に、和田さんが「あなたはなぜ歌うのですか?」と聞きました。成人した娘がいるその女性は、自分が青年期に悩みを忘れようと麻薬に手を出し、次第に悲惨な中毒症状に陥り、身も心もズタズタになったというのです。その女性はある日、更生施設を訪れ、そこでゴスペルを歌うことによってイエス・キリストに出会って罪から開放されたということを語りました。(テレビ朝日「命をつなぐ歌」2004.12.31

 和田さんが出会ったコーラス・グループは薬物中毒更生施設のアディクス・リハビリテーション・センター(
ARC)にあったコーラス・グループで、ARCゴスペル・クワイヤでした。このARCゴスペル・クワイヤは1997年にインディ・レーベルから「ウォーク・ウィズ・ミー」というアルバムをリリースしたところ、多くの人々を感動させ、アマチュアながら当時15万枚もの売上があったそうです。ゴスペルのルーツは黒人霊歌ですが、黒人霊歌はキリストの救いを歌ったものということができます。ARCゴスペル・クワイヤは、体験的にキリストに出会っている者たちの集まりなので、多くの人の魂を揺り動かすことができるのだと思います。

 ARCは、1958年にジェームス・アレンというアフリカ系アメリカ人が「麻薬で苦しんでいる人々を救いなさい」という神からの命令を受けて作ったということです。その体験は、神からの実際の声が聞こえてきたということか、心の中で神の声と思われるようなことばが聞こえたような気がしたのか、具体的なことはわかりません。現在、ジェームス・アレンがニューヨークのハーレムに作ったその更生施設には、約百人のスタッフが働き、今までに二万七千人以上の人々が薬物中毒から開放されていったという事実を知れば、神がアレンに特別なことばを与えたであろうことは納得がいくことではないでしょうか。

 ジェームス・アレンは施設の中でクワイヤ(聖歌隊)を組織しました。また、「オー・ハッピー・デー」という曲については、原曲では二度しか使われていない「イエスが私の罪を洗いきよめられた時」(when Jesus washed our sins away)ということばを何度も繰り返して歌うようにして編曲しました。そして、その歌が今や一般に知られている「オー・ハッピー・デー」となっています。また、この歌詞にあるような体験は、和田アキ子さんと話した女性の体験でもありました。体験した者たちの歌なので、多くの人たちに感動を与えたと思われます。イエス・キリストは、人の罪を救うためにこの世に来てくださいました。そのことを祝うのがクリスマスです。聖書でいう罪とは「犯罪」のことではありません。それは、すべての人の中にある性質のことであって、ARCのような施設の中にいる人にだけあるものではありません。イエス・キリストは私たちすべてのために来られました。ぜひ、教会においでくださり、クリスマスをお祝いしましょう。(大泉聖書教会牧師池田尚広)

〔テレビ朝日の番組とARCの情報:大塚野百合著「賛美歌・唱歌とゴスペル」参照〕