《人生を変える本》

このあいだ、皇太子ご夫妻が南太平洋のトンガを訪問され、国王の戴冠式に参列されました。南太平洋には宗教がキリスト教である国々が多くあります。その中に、特に宣教師が来たわけではないのに、島人がキリスト教徒になったミクロネシアの島々があります。(ミクロネシアは約300の島々からなっています)。

1790年、当時のイギリス政府はゴムの木を栽培させるために、約100人のイギリス人をミクロネシアのカイキという島に送ったことがありました。

島に着いてみると、そこはまさにパラダイスのようでした。特に島の女性は魅力的だったそうです。この約100人の男たちはしだいに堕落し、政府からの使命を忘れ、船長に反抗して反乱を起こしました。彼等は船長を縛って小舟に乗せて、海で死ぬように追いだしたそうです。

その後、彼等は自分たちのことが本国に知られるのを恐れ、ピテカリンという島に移りました。しばらくして彼等のあいだで喧嘩が絶えなくなり、ズースという熱帯植物から酒を作って飲むようになってからは、さらに喧嘩はひどくなりました。喧嘩はやがて殺し合いへと発展していったそうです。毎日、お酒を飲んで、島の女性と遊び、喧嘩をしては殺し合いに発展するということが繰り返されました。そして、最後にジョン・アダムスという男だけが残ったそうです。この島では、西洋人はこの男だけとなりましたが、島には多くの混血の子どもたちが生まれ育つようになりました。

 ところで、縛られて小舟に乗せられ、太平洋を漂流させられた船長ですが、数日後に商船に発見されてイギリス本国に戻ることができました。船長からの報告を受けた政府は反逆者を逮捕するために海軍を送ろうとしましたが、ナポレオンとの戦争が起こり、できなくなってしまいました。

 それから30年が経って、島の近くを通ったアメリカの船が島に上陸しました。上陸した人たちは目のまえの光景に驚きました。そこには礼拝堂が建てられ、多くの青年たちがそこに集っていました。一人の老人が牧師をしていましたが、この老人が最後まで生き残ったジョン・アダムスだったのです。

仲間同士の激しい戦いの末に最後まで生き残ったジョンは、イギリスから乗ってきた船に戻ってみました。そして一冊の聖書を見つけたのです。聖書を読み進めていくと彼の目に涙が溢れてきました。神が本当に生きておられることと、神は正しい存在であると共に、心から悔い改める者は赦してくださる存在であることを知りました。彼は過去の罪を告白し、赦しを経験したのです。

その後、自分を含めたイギリス人男性と現地の女性たちとのあいだに生まれた子どもたちや、現地の子どもたちを集めて字を教え、聖書を教えました。住民たちもジョンを尊敬し、彼の指導に従ったのです。そして、住民たちはイエス・キリストを信じる者となったのです。

ジョン・アダムスの今までの人生は、決してほめられたものではありませんでした。この人物を変えたのは、厳しい戒律でもなく修行でもありませんでした。ジョン・アダムスは聖書を通して神に出会ったのです。

聖書は、神が存在していることと、神が私たち一人ひとりを生かしておられることを語っています。また、神は私たちの魂の親であり、親心を持って私たちを見ていることを伝えています。実際の親が子どもの存在そのものを愛するように神も私たちの存在そのものを愛しておられます。

聖書は、神の赦しを語りますが、それはこの世の法律を無視してよいということではありません。それはあくまでも神との関係においてのことです。しかし、全知全能の神が決して自分を責め続けることがないということを体験した人は、その人の過去に対して正直にさせられるのです。神が救い主(すくいぬし)イエス・キリストを遣わしてくださって、その人の罪の犠牲とされたという事実を信じる者は、新しい人生が開かれるのです。ぜひ聖書をお読みください。また、教会ではあなたのおいでをお待ちしています。

〔大泉聖書教会 牧師池田尚広〕