《ゴールデンルール》

聖書の言葉で、「ことわざ」のように思われていることばが多くあります。たとえば、以前このIZUMIで紹介した「目には目を。歯には歯を」とか、「目からうろこ」などがそうです。

今回紹介させていただくことばは、日本の社会ではそれほど有名ではないかもしれませんが、西洋社会ではゴールデンルール(いちばん大事なルール)と言われているものです。それは、次のことばです。

何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。」()

 これはキリストが語った「山上の説教」(新約聖書マタイの福音書5章〜7章)の中に出てくることばです。現代は家庭の教育力の低下が叫ばれている時代ですが、親が子どもにこのような模範を示すことができれば、すばらしいことではないでしょうか。たとえば、誰でも自分をほめて欲しいという願望をもっています。そうであるなら、自分のほうから相手のちょっとした良いところを口に出すことができれば、心のコミュニケーションは生まれると思います。髪型がかっこいいとか、今日はすっきりした表情だとか、ちょっとしたことなら口に出すのにそれほど勇気はいらないかもしれません。

子どもを持つ親御さんたちのいちばんの関心は多分、大学受験だと思います。大学卒業までなんとかできたとしても、就職してからつまずくケースが多くあることが現在の統計に出ています。ブラック企業に就職してしまったケースは別としても、良いとされる企業でも昔に比べて若者の退職者が多くなってきているそうです。

 強い口調で叱られた経験がないとか、打たれ弱いということが原因である場合もあるようですが、心の教育がされていないということも大きな要素だと思います。たとえば、意識が自分から相手に向かっての意識だけで、他の人の立場に立って考える発想そのものがない人が増えているように感じます。そして、何かの出来事をきっかけに被害者感情だけに支配されたり、客観的に見てそれほどのことでもないのに精神的に追い詰められるケースも多く出てきているように思います。

ところで、「相手の立場になれ」ということは、学校の道徳教育でよく語られます。しかし、この考え方は重荷となる場合もあります。そして、結果的に単なる理想となる場合もあるように思います。また、相手が自分勝手な人の場合もありますし、その場その場の適応はなかなか難しいのではないでしょうか。

しかし、聖書のことばは現実的であり、決して絵に描いた餅ではありません。聖書は、「自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。」と語ります。このことばから、自分にできないこともがんばってしなさいというイメージを持つ人は、多分いないはずです。自分もしてもらって嬉しいことの中で、自分も相手に対してできることをまずイメージするはずです。神さまは、最初から難しいことをしなさいと私たちに語る存在ではありません。

学校教育の新しい学習指導要領では道徳教育が増やされると聞きましたが、身近な模範である親御さんの生き方が変わらないようでは、あまり効果は期待できないと思います。

ぜひ教会においでくださって、聖書を学んでいただきたいと願っています。聖書はいわゆる道徳の書ではありません。現実的で合理的な書物です。必ずあなたの家庭や仕事に祝福をもたらすはずです。教会ではあなたのおいでをお待ちしています。

〔大泉聖書教会 牧師池田尚広〕

()新約聖書マタイの福音書7:12