《ハレルヤコーラス》

ハレルヤコーラスを御存じだと思います。ハレルヤコーラスは、ヘンデルが作曲した「メサイア」という曲の中で出てくる有名なコーラスです。

クラシックの分野でイギリスには名曲と呼ばれるものは少ないわけですが、メサイアはイギリス人が誇りに思っている名曲の一つです(ドイツ語に訳されたメサイアもありますが、原曲は英語で作られました)。ヘンデルはドイツ人ですが、イギリスの宮廷音楽家として長年活躍しました。

1743年、ロンドンでメサイアがはじめて上演された時、ハレルヤコーラスが合唱されている時に国王ジョージ二世が立ちあがったので、周りの観客も立ち上がったとされています。それで、現在でもメサイアが上演されてハレルヤコーラスの部分が歌われる時には、観客も立ち上がる習慣があります。

ハレルヤコーラスは、次のことばが何度も繰り返されています。「ハレルヤ、全能の主()、治めたまわん。世の国民(くにたみ)、今や我らの主に帰するにおよべり、主の主、諸王の王、永久に(とわに)、主、治めたまわん。ハレルヤ。」

国王が立ち上がったのを見て周りの人も立ち上がったということについては、今では史実ではないと考えられています。当時は全知全能の神をたたえる歌が演奏されている時には起立する習慣があったので、単にみんなが立ち上がったというのが有力な説です。少なくとも、国王は神に敬意を表する意味で立ち上がったことに変わりはありません。

ところで、メサイアとは「救世主」という意味です。

 「メサイア」という楽曲の中の歌詞は、すべて救世主について預言されている聖書のことばを集めたものです。

聖書はキリスト教の経典ですが、聖書は旧約聖書と新約聖書に分かれています。旧約聖書は、救世主がやがて来るという預言が多く記されていて、新約聖書は救世主が来てからのことが記されています。旧約の「旧」は時間的に古い約束を表し、新約の「新」は時間的に新しい約束を表しています。(ちなみに、ユダヤ人はイエスを旧約聖書で預言されている救世主と認めなかったので、ユダヤ人の聖書には新約聖書がありません)

「メサイア」は、救世主が生まれることを預言している部分から歌われ、誕生、受難、復活、世界に対する裁き、救われる者の永遠の祝福で終わっています。ハレルヤコーラスは救世主の復活と支配を表現した部分で、長めの前半のクライマックスになっています。

 メサイアということばは、救世主を意味するヘブル語を英語的に発音したものです。旧約聖書の原語はヘブル語で、新約聖書の原語はギリシャ語です。ヘブル語のメサイアということばをギリシャ語に訳す時、「主」という意味を持つギリシャ語の「キリスト」を使いました。ですから、イエス・キリストとは「救世主であるイエス」という意味になります。

 クリスマス(Christmas)とは、キリストの祭りという意味です。この季節になると、イギリスやアメリカではよく「メサイア」が上演されます。ちなみに、ドイツではバッハの「クリスマスオラトリオ」(キリストの誕生の様子をオラトリオという形式で演奏したもの)がよく上演されるそうです。日本でベートーベンの第九が演奏されるようになった経緯は諸説ありますが、欧米のような「メサイア」や「クリスマスオラトリオ」のような年末の行事を作りたかったというのも一つの説としてあるそうです。

 教会のクリスマス礼拝ではメサイアのような大曲は演奏されませんが、「きよしこの夜」などの有名な曲をみんなで歌います。ぜひ、教会においでくださって、私たちを救うために来られた救世主について知っていただければ幸いです。おいでをお待ちしています。

〔大泉聖書教会 牧師:池田尚広〕

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