《幸せになる法則》

 『企業戦士よ、定年後に戦士するなかれ』

これは、都内で開かれたある経営セミナーの演題です。講演者は経営コンサルタントで、経営・能力開発研究会代表の田口誠弘さんという方でした。田口さんは自身の体験を通して、サラリーマンたちに「いかに定年後に戦士しないように、どのように企業人として生きるべきか」警鐘を鳴らしている。

 田口さんは山ア製パンに就職し、営業畑を歩み、工場長の次のポストまでになったが、社内紛争のあおりを受けて左遷された。社員教育担当部署に移動し、社員教育・マネイジメントの専門家を目指すことになる。

 田口さんは、88年にバブル経済の財テクブームに踊らされ、不動産投資に走る。一億円の借金をして都内のワンルームマンションを購入した。しかし、91年にバブルが崩壊。一億円の物件は千五百万円まで値下がりした。負債処理に13年の歳月を費やした。すべては妻に内緒でしていたため、事実を知った妻とは冷戦状態が続いた。ある日、ふてくされて寝ているところを妻に足で蹴られて、肋骨を骨折したこともあった。気の遠くなるような債権者との折衝が続いたが、奇跡的に自宅は残り、家族崩壊は免れることとなった。その頃、田口さんは教会に通い始めた。

「人は、たとい全世界を手に入れても、まことのいのちを損じたら、何の得がありましょう」という聖書のことばが心に迫ってきた。やがて、55歳で洗礼を受けた。

「私はがんばり屋でした。だからお金と自分しか信じられるものはなかったんです」。挫折を通して田口さんは自分の不完全さ、醜さ、傲慢を知らされたという。「負債処理の戦いを通して、私は妻に大きな精神的苦痛を与えました。気丈な妻なくして、この試練を乗り越えることはできませんでした」。信仰を持ってから田口さんは奥さんに対する姿勢が大きく変わりはじめた。奥さんと教会に通うことが夢だったが、口に出せずにいた。しかし、ある日、奥さんのほうから教会に行くと言い出した。その後、奥さんも信仰を持ち、洗礼を受けた。田口さんは、「神さまは、あの事件を通して私たち夫婦の関係を今までにない強固なものと変えてくださったのです」と言っている。

 田口さんは退職後、人材教育コンサルティング会社にスカウトされた。そこでしばらく働いた後に独立して現在に至っている。企業戦士真っ只中の人や退職した人、いろいろな人と接した。企業人としては成功した人なのに、その後の人生が幸せでない人も多く見ることとなる。

自分の体験やコンサルタントとしての体験から、定年後に戦死しやすい人に共通する法則が見えてきたという。

@組織内の地位の高い人で、部下をあごで使ってきた人。A企業戦士時代、家族を無視して育児も教育も妻任せで、日曜はゴルフなどで過ごした人。B仕事中毒で疲れきっている人。Cストレス一杯、体調不良、多量の薬に頼っている人。D感謝・感動のない人。E社外に友だちや人脈のない人。F同窓会でやたらと権勢をはり、かっこつける人。G夫婦仲の悪い人、特に妻に暴言を吐く人。H仕事以外に何もない人、趣味のない人。I家事は妻の仕事だと思い込んで一切手を出さない人。J家族、特に妻に対し、相談しないで勝手に物事を決める人。

 また、無料相談などのカウセリング経験から次のことも見えてきた。「家族から嫌われる人は地域から必ず嫌われる」「夫婦仲の悪さはすべての問題の根源になる」

〔『バイブルに見るビジネスの黄金律2』マナブックス発刊(発売・いのちのことば社)より引用〕

 最近は、試練に遭わないようにすることに人々は熱心ですが、そのようなことなどあり得ません。また失敗しないということもあり得ません。大切なことは、試練や屈辱や失敗を必ず経験するこの世界で、どのように生きていくかということです。田口さんは大きな失敗のあとに、何かを求めてキリスト教会に行きました。そして、やがて奥さんも教会に行きました。多分、奥さんは夫の本当の変化を見たからではないでしょうか。相手の本当の変化を見るということは、逆に自分の問題も見えてくることにもなります。そうでなければ、奥さんは自分も教会に行くとは言わなかったでしょう。試練と失敗は、二人を深く結びつけることにもなりました。

 ですから、現在問題の只中にいるということは決して望みがまったくないわけではありません。大切なことは、まず現実を素直に認めることです。そして、心を低くすることです。きよい神の前に心を低くできる人は、不思議と他の人に対しても心を低くできるものです。はじめは、いろいろわからないこともあると思いますが、ぜひ、教会においでいただきたいと思います。教会ではあなたのおいでをお待ちしています。
 (大泉聖書教会牧師池田尚広)