《一般化》

アメリカのトランプ大統領の発言は、いろいろな面で世界を驚かせています。トランプ氏のある意見を支持しているアメリカのキリスト教会もありますから、日本人の中にはキリスト教とは「キリスト教=トランプ発言」だと理解する人もいます。

物事を一般化するには、できるだけ多くの資料を材料にして一般化してほしいものですが、一般的な日本人が接するキリスト教についての資料は多くはないので、そのような考えを持つ人もいるのだと思います。

あなたが知っているキリスト教についての資料は何でしょうか。けっこう多くの人がガリレオ裁判のことを持ち出してきます(ガリレオは地動説を主張したが、当時の教会は天動説を支持していた)。しかし、ガリレオより以前に地動説を述べていたコペルニクスが教会の司祭であったことをどれだけの人が知っているでしょうか。

ところで、歴史の解釈ということについても、まず一次資料にあたることと、できるだけ多くの資料を材料にしなければ間違った解釈をすることがあります。

 日本からインドネシアにキリスト教の宣教師として行っていた入船尊(たかし)という人がいます。今から40年ぐらいまえのインドネシアで活動していたわけですが、当時の経験を次のように書いています。

「オランダの350年もの支配に比べると、日本の支配はただの3年半に過ぎなかったのに、どうしてこんなにも、事あるごとにかつての日本人のした残虐な数々が話題になるのだろう、と思うことがあります。オランダの支配はもう歴史的事実となるほどの永きにわたったのに比べて、日本の場合は、戦時の非常事態の下で、精神的にも政策的にも、非常にラディカルな方法がとられたことによるのでしょう。インドシナ方面に労務者(ロウムシャという用語はインドネシア語化されて今も使われています)として連れて行かれ、帰って来られなかった人をふくめて、何百万もの人々が犠牲になっているのです」(1)

入船氏は、一次資料にあたる「実際に体験をした人に会う」ということをしました。最近では、350年に渡るオランダの支配から解放された直後のインドネシア市民の歓喜の映像をYouTubeなどで見ることができます。それだけを見ると、欧米列強の支配から日本がアジア諸国を解放してあげたという印象を持つ人は多いのではないでしょうか。歴史の解釈においては資料の用い方に注意が必要です。

ところで、入船氏が書いているようなことを述べると、日本人のくせに自虐的だと批判する人がいます。そのような批判をする人の心の中には、比較による価値観しかないことがほとんどです。比較によらない健全な自尊心があるなら、たとえマイナスな評価を受けたとしても自分の存在価値には、いささかも影響しないはずです。健全な自尊心は、私たち一人ひとりをそれぞれの父母を用いて存在させたお(かた)()を信じることから生まれます。どこの人でも完全な人は一人もいませんし、誰でも過ちを犯します。完全でなければ存在価値に影響するような価値観自体に問題があります。

 教会とかキリスト教について、あなたの中にはもしかしてマイナスな情報もあって、それで良くないイメージを抱いていることもあるかもしれません。しかし、それは少ない情報で全体を一般化しただけかもしれません。ぜひ教会においでくださって、キリスト教の一次資料(聖書)を正しい解釈のもとで理解していただきたいと願っています。教会ではあなたのおいでをお待ちしています。

〔大泉聖書教会牧師 池田尚広〕

(1)「続・この大いなる福音のために」P29(いのちのことば社)

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