《クリスマスの風物詩》
アガサ・クリスティーの代表作のひとつに「名探偵ポアロ」がありますが、その作品の中で「ポアロのクリスマス」というものがあります。イギリスのクリスマスの風景を表わすものとして、救世軍(The
Salvation Army)がクリスマスソングを歌いながら募金活動をしていることがありますが、この「ポアロのクリスマス」でも救世軍が登場しています。
現代の日本人にとってこの団体は影が薄いかもしれませんが、日本でも年配の方はご存じの方は多いのではないでしょうか。この団体はキリスト教プロテスタントの教派の一つで、ウィリアム・ブースという人が社会活動に重きを置く団体としてイギリスで設立しました。社会活動の中でも、「救世軍の社会鍋」が有名で、クリスマスシーズンになると大きな鍋が用意されて、その中に人々は困っている方々のために募金を投げ込む形となっています。その時に救世軍の奉仕者は、おもに金管楽器の伴奏でクリスマスソングを歌っている印象があります。
それから日本の「吉原炎上」という映画で、この救世軍が登場していますが、ご存じでしょうか。
救世軍は廃娼運動(女性が身売りされるような慣習を廃止する運動)にも熱心でした。奉仕者たちはデモ活動のような批判的な言葉を叫ぶのではなく、遊郭の近くでおもに讃美歌を歌ったりラッパを吹いていたようです。また、この団体の医療分野での活動については、救世軍病院(杉並区、清瀬市)などを通しても知られています。
さて、西欧社会で救世軍の社会鍋以上に一般的なクリスマスの風物詩となっているのはキャロリングです。キャロリングはクリスマスシーズンになると多くのキリスト教会が行なってきた習慣で、教会に集う信者たちがいくつかのグループに分かれて、さまざまな場所を訪問してクリスマスソングを歌う行事です。たとえば、老人ホームなどで子どもたちが明るい声でクリスマスソングを歌うと施設に入所している方々は喜びます。その他にもキャロリングは駅のような人が多く通るような場所でも行なわれて、人々はクリスマスの気分を味わってきました。
ところで、この教会でも以前はクリスマスシーズンに、ある老人ホームを訪問してクリスマスソングを歌わせていただいていましたが、コロナが流行してからは休止しています。
クリスマスにはクリスマスプレゼントが付きものですが、世界鍋やキャロリングなどからも推察できるように、「もらう」ということよりも「与える」ということが本来は中心にあることがわかります。そして、その根本にあることは「与えられたから与える」という思想です。何を与えられたかというと、神から救いを与えられたということです。
キリストとは「救世主」とか「救い主(すくいぬし)」という意味で使われている言葉で、そのキリストが私たちに一方的に救いをくださったことを祝うのがクリスマスです(クリスマスとはキリストの祭りという意味があります)。ぜひ、その救いの意味について知っていただきたく願っています。〔大泉聖書教会牧師池田尚広〕