2025年6月号「生き方のバランス」

《生き方のバランス》
どのような活動でも、「自分のやりかた」を貫くべき時と、「人の言うことを聞くべき時」があるものです。


お笑い芸人の綾小路きみまろさんが、あるテレビ番組で自分のお笑いのスタイルが最初は理解されなかったということを語っておられました。そして、芸人の先輩などからそのスタイルを否定されたこともあったそうです。しかし、必ずうける時が来ると信じて自分のスタイルを貫き、多くの成功を手にしました。
スポーツの世界でも自分のやりかたを信じるべき時と、それにこだわることをやめて人の言うことを聞くべき時があるようです。プロ野球で、最近一軍で活躍し出したある野球選手は、今まで言われたことを聞き過ぎたと言っていました。その逆のパターンとして、大学野球で投手として成功してプロ野球に入ってきた選手が、こだわりがあり過ぎて投手コーチの言うことをまったく聞かないような状態だったと、その投手コーチが言っていたと、ある野球解説者が語っていました(その投手は数回勝ち投手になった後に野球をやめていきました)。


会社勤めの人であっても、個人事業者でもあっても、どんな仕事をされている人でも、自分のやりかたを信じて貫くべき時と、人のアドバイスを仰いで自分のやりかたを修正すべき時のバランスを考えながら生活しておられるのではないでしょうか。
 キリスト教会は「全知全能の神の存在」をまず語っていますが、その存在のまえにへりくだることは正しいバランスが与えられるための大きな要素となります。
 概して私たちの国では、クリスチャンという人たちはおとなしくて優柔不断な人たちと思われることがあります。逆に、西欧社会に出現する独裁的な指導者を見て、絶対神(全知全能の神)を信じるから、信じる者たちも利己主義的になると思っている人もいます。
まえの5千円札の肖像に使われた新渡戸(にとべ)稲造(いなぞう)のことはご存じだと思います。新渡戸は国際連盟事務局次長として活躍した人で、クリスチャンでもありました。新渡戸は英語が堪能であったということもありますが主張すべきことを明確に語り、世界中のリーダーたちと堂々と渡り合った人物としても知られています。


ところで、絶対神を信じるから信じる者も利己主義的になるという発想は、きわめて日本人的な発想です。私たちの国の宗教観は神と人の境がないものですから人間も神となります。その発想のままでキリスト教の神を想像するので、信じる者も利己主義的になると考えるようですがそうではありません。西欧社会に出現する自己中心的な人は、いわゆる「神をも恐れない人」で、そのような人は神を利用することもあります。
神と人との境のない世界では、人は間違ってはいけないと強く意識して失敗を極端に恐れるものです。しかし、人は神ではないと明確化された世界では人は失敗を恐れなくなります。


現代の日本の若者はおとなしくなったと言われますが、教育も社会も「間違ってはいけない」と強く圧力をかけているので、彼らも失敗をすることを恐れるからではないでしょうか。何かにチャレンジをするには、自分のやりかたを信じる必要があります。うまくいかない場合もありますが、そのような時には全知全能の神のまえにへりくだっている人は方法転換しやすいものです。ぜひ、教会においでくださってキリスト教会が語っている信仰について知っていただきたいと願っています。
〔大泉聖書教会牧師 池田尚広〕