2025年10月号(アストロボーイ)

《アストロボーイ》
鉄腕アトムは、日本が誇るアニメのひとつですから、どんな人でもご存じだと思います。アメリカでも鉄腕アトムはアストロボーイとして1963年からNBCテレビで放送さて、高視聴率を記録しました。
鉄腕アトムファンの方はご存知だと思いますが、アトムは地球が滅びることを防ぐために太陽に突入して行き、最期を迎えることとなります。手塚治虫氏はアトムの「自己犠牲」をストーリーの終わりのシーンとして描きました。


しかし、このラストシーンはアメリカでは放送されなかったそうです。その理由は、「ヒーローらしくない」ということでした。日本人としてはヒーローこそ、自己犠牲的精神を発揮する存在だと理解しますが、当時のアメリカのヒーロー像はアメリカ映画でもよくあるような「美女とキスをして、かっこよく終わる」ようなものだったのかもしれません。
ある日本人の方は、アメリカの習慣や文化はすべてキリスト教から来たと思っておられるようですが、そうではありません。むしろ、アトムの自己犠牲こそキリスト教を表現しています。その意味は、キリストが人類を救うために犠牲となったという意味であって、みんな自己犠牲的な精神を持ちましょうという意味ではありません。


アメリカ社会は、信仰の自由な表現を求めてイギリスから渡ってきたピューリタン(清教徒)と言われる人たちによって土台が据えられましたが、その後はさまざまな人種やさまざまな思想を持つ者たちがアメリカ社会を構成していきました。
日本社会のヒーロー像の形成には武士道が関係していることに反対する人は少ないと思います。主君のために自分の命を犠牲にするような精神を尊いとする武士道は、社会のために命を犠牲にすることも尊いと考えたはずです。しかし太平洋戦争の時は、その精神が都合良く利用されたのかもしれません。


ところで、キリスト教会の建物には十字架がついていることがほとんどです。十字架はローマ帝国の死刑の道具であって、ある意味ではそれは恐ろしいものです。しかし、キリスト教会がそれをシンボルとしているのには訳があります。それは、キリストが人類の救いのために犠牲となったということを象徴しているからです。このことからもご理解いただけると思いますが、キリスト教の本質はいわゆる宗教的な生活(禁欲、精神主義、自己鍛錬など)をすることではありません。以下のことをすぐに信じることはできないとしても、キリスト教会は次のようなことを信じて、そして伝えているということを知っていただければ幸いです。
・すべての人の魂は、この世界の造(つく)り主(ぬし)である神(父なる神)によって造られている。
・すべての人の魂は、造(つく)り主(ぬし)を求めている。
・イエスは父なる神と等しい権威を持つ「神の子」である。
・「罪(sin)」とは、造(つく)り主(ぬし)を無視することである。
・神の子の犠牲は自分のためでもあったと信じる者は、神との関係が回復する(救われる)。
・救われた者は、地上の生涯において神が共に歩み、死後には永遠のいのちが与えられる。


十字架がキリスト教会のシンボルとなっている理由がご理解いただけたと思います。知的な人は信じないと思っている人もいるかもしれませんが、17世紀の偉大な物理学者であり哲学者であったパスカルは信じました。また現代でも多くの科学者も信じています。
教会ではすぐに信仰を持つことを強要することはありませんので、お気軽においでください。
〔大泉聖書教会牧師 池田尚広〕